PBSのベトナム戦争を描いたドキュメンタリーシリーズを見た。
全部で10話。非常によく取れていると思う。
色々と思うところがあるので、書き残しておきたい
・資源の奪い合いでもなく、国も防衛でもなく、単なるイデオロギーのための戦争
古くから戦争は領土拡大、資源獲得のためにあった。攻められた側は国の防衛のために戦う。ベトナム戦争はこれらの目的の何れにも該当しない非常に不可解な戦争だ。共産主義というマルクスが発明したイデオロギーを防ぐために、250万人近くの命が失われた。イデオロギーは、時代によって進化する。今やベトナムもドイモイ政策のお陰で市場経済に移行。果たして何のために米国が戦ったのか。
・戦争の発端は非常に些細なものから始まる
米国の最初の軍事行動は、双方の誤解によってスタートした。当時、両国の緊張関係はあったが、どちかも戦争には否定的であって、それをなんとか回避しようとしていた。残念ながら双方間のコミュニケーションチャネルがないので、相手が本気で戦争を仕掛けていると思い込み、弱気に対応したら不味いということで、ズルズルと戦争が拡大して行った。外交チャネルの重要性を感じる。今日における、各国間の摩擦も、ひょっとした拍子で全面戦争に拡散する可能性がある
・米国の情報公開は徹底されており、過去の大統領の肉声がテープに残っている
PBSのドキュメンタリーの中で、過去の大統領のプライベートの電話録音がよく引用されている。どんなにセンシティブな内容でも、処分されていないのはすごい。歴史は時間が経つとともに、都合のいいように書き換えるのが常だが、ファクトが残っているとそれが限りなく難しくなる。IoT化している現在、仮にすべてのデータが残されるのであれば、歴史学者が解釈できる範囲は随分と狭くなるだろう。
・国が存続するためには、国民のサポートが不可欠。軍事力ではない
南ベトナムは初期から米国の多大な軍事的支援を受けていたのだが、政府が腐敗していて圧倒的不人気だった。数十回のクーデターが起こり、国民に支持された政府はついに生まれなかった。民主主義でも独裁政権でも結局のところ、国民のサポートがないと何もできない。独裁政権は0・1で極端に政権が反応するが、民主主義は段階的にそれを吸収するの違いしかない。初期から米国はそれを認識していたにも関わらず、支援を続けていたのは、政治家の限界を示している
・民主主義において、大統領の最重要課題は選挙
大統領のテープの中で、選挙に勝つためというフレーズが頻繁に出てくる。事実、ニクソンは平和をもたらす機会があったが、選挙のために何回も意図的にパスした。勿論選挙が公正という前提であれば、選挙の結果は民意なので、それを重視するのは間違いはないのだが、局所的に機能していない場面が見受けられる。四半期決算を追う上場企業のCEOに近い。歴史に残る大統領は、選挙を超えた大義を見出さないといけないのではないか