• Oculus はヘッドマウントディスプレイの革命児
◦ Oculus Riftとは一種のヘッドマウントディスプレイ(以下、HMD)だ。顔面にディスプレイを付けて臨場感ある映像を楽しむ装置であり、バーチャルリアリティの一種とも言える。20億ドル(2000億円)の買収と聞けば、さぞ革新的な発明かと思いきや、実はHMD自体は80年代後半に発明されたものだ。その後様々なメーカーが参入と撤退を繰り返すも、メインストリームからはかなり遠い存在であった。例えば、MicrosoftはHMDに見切りをつけ、Microsoft IllumiRoomという、プロジェクターを使いリビングルームの壁にゲーム画面を投影するソリューションに力を注いでいた。
◦ そこにOculusという無名のスタートアップが登場し、KickstarterでOculus Riftのプリオーダーを開始。なんと目標2500万円に対し、一気に2億5千万円も集めてしまったのだ。単価を考えるとほぼ7000台分。今までの世界全体のHMD年間売上台数に相当する量である。
• ストレスフリーの没入感を3万円で実現
◦ 今までのHMDが失敗した理由のひとつに、「3D酔い」と呼ばれる使用中・使用後のめまいが挙げられる。ほぼ全視界を画面が覆うため、脳は映像が現実だと錯覚するが、映像の動きと顔面の動きに少しでもギャップがあると脳が混乱し、めまいを起こしてしまうわけだ。
◦ もちろん今までにもこの課題をクリアした製品はあったものの、一般消費者に全く手の届かない値付けがされていた。Oculus Riftの凄いところは、使用後の違和感なく圧倒的な没入感を提供しながら、価格を300ドルに抑えたことだ。
• 21歳の創業者はまたもや大学中退
◦ 世界中の電機メーカーが総力をあげても実現できなかった、この製品を開発したのは何と大学中退、弱冠21歳のPalmer Luckey氏。彼は14歳から近所でバーチャルリアリティのコミュニティを立上げ、自らも多くのプロトタイプを作ってきた。起業前は、University of Southern CaliforniaのInstitute for Creative Technologies (ICT)でのアルバイト。経歴からも彼自身がHMDのニーズ、マーケットを知り尽くしていたことが伺える。iPhone然り、Tesla Roadster然り、テクノロジー自体の先進性だけでなく、プロダクトコンセプトの素晴らしさやマーケティングの妙が成功の鍵となった好例と言えよう。
• 3DスキャンとHMDがタイムマシンを作る!?
◦ しかし、「いくらテクノロジーと良いプロダクトコンセプトをあわせ持つと言っても20億ドルの価値は無いのでは」と思う方も多いだろう。買収を仕掛けたFacebookは、HMDがパソコンのモニターやテレビ、スマートフォンやタブレットの画面に次ぐ、未来の新しいスクリーンになると予想している。一方、人気を得たOculusの開発コミュニティには最も優秀な開発者がすでに6,000人以上集まっている。Facebookは、自ら描く未来に備えて、Oculusというコミュティを含む「プラットフォーム」を買ったのである。MineCraftがOculus Rift版をキャンセルするなど、一部のハッカーはFacebookのような大企業を嫌うので、実際にこの計画が筋書き通り進むかは今のところ不透明だ。
◦ 仮にHMDが未来のスクリーンとなったら、どんな世界が我々を待っているのだろうか。究極的には映画「マトリックス」にあったような、物理的な肉体と思考の分離が可能になる。瞬間移動に近い体験が可能になるかもしれない。例えば、カメラを装着したロボットを火星に走行させて、その映像をHMDで映し出す。同時に人体の動きをキャプチャーする。動きに合わせてロボットの進行方向を調整すれば、擬似的に火星で歩いている感覚を再現できる。
◦ 直近の応用用途は、まずゲームからだろう。その次に議論されているのは、リアルに体験すると危険を伴う場所のシミュレーションだ。例えば、消防隊員が仮想空間で防災訓練を行うことや、軍事活用も考えられる。
◦ もう一つHMDの普及を後押しするのは、空間をそのままデータ化する3Dスキャンの普及だ。3Dスキャンには色を識別するRGBセンサーに加えて、距離を測るDepthセンサーが必要となる。据え置き型の完成形はXbox Oneに付随するKinect 2だが、持ち運べないためこれだけだとスキャンできるものが限定的だ。先週、世界にまだ50台しかないGoogle Tangoを実際に使ってみたが、Kinect One並みの精度がモバイルで実現できていると実感した。モバイルで3Dスキャンが出来ると一般的なユーザーでもHMDに投影するイメージがもっと簡単に作れるようになるし、ユーザーとHMDのインタラクションも容易になる。
Month: October 2014
Moto 360
一年ぶりにiOSからアンドロイドに乗り換えた。
主な理由はスマートウォッチを使いたいから。
Apple Watchの発売を心待ちにしていたのだが、何だか成金のおっさんがつけそうなデザインだし、いつ手に入るかもよくわからない。その他のスマートウォッチの中では、Moto360が圧倒的に優れていたので即決した。
ウェアラブルの領域では、フィットネス系に始まり、Google Glassが続いたが、スマートウォッチの波がいま来ていると思う。これがGoogle Glassのようにコンセプトだけで終わるのか、それともフィットネス系のようにニッチな存在にとどまるのかを見極めるには、まず自分でつけてみないと仕方ないと思ったのだ。
理論的に考えると、スマートフォンで入手する情報には、数秒のみ確認すればいいものと数分間見る必要があるものがあるので、デバイスが違って当然な気もする。一秒間の情報を確認するだけでいいのに、スマホを取り出すだけで3秒もかかったら本末転倒感が否めない。
しかしながら、ウォッチはアウトプットのスペースが狭い上に、インプットの手段も限られてくるので、いかに適切なタイミングで適切なメッセージを送るかがUXの鍵だと思っている。その点GoogleはすでにGoogle Nowを通じてカード型のノーティフィケーションをしばらく実践していたので、経験値は溜まっている。
使ってみて5日間くらい経つが、一言で言うとまだコンセプトレベルに留まっていると思う。個人的に数秒のみ確認したい情報は、時間、天気、次のスケジュール、重要なメッセージ(メール、フェースブック、その他IMアプリ)だと思うのだが、最初にプッシュされてくるものは大体違う上に、インプットがスワップしかできないので、探したいコンテンツも見当たらない。加速度センサーとマイクが付いているのだが、時間を見るのにも、大抵の場合画面を押さなければならない。とすると結局はスマホかPCで確認することになる。
まぁ、デザインは悪くないし、250ドルでつけても恥ずかしくない時計が手に入ったと思えばそんなに損した感じもしないのだが。時計は本質的にはもはやファッションアイテムなので、唯一の機能である”時間を確認する”で時計に負けなければ、他の機能がコンセプトだけでも、意外に結構売れるのかもしれない